ベルリンのコントラバス奏者高橋徹のBlog


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2017年 06月 29日 ( 1 )

9. in der Philharmonie

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上智大学のオーケストラを50年以上指導なさってる汐澤安彦マエストロ。
僕にとってはベルリンに長いMちゃんの父上でありNちゃん、Aちゃん、Mちゃん三人娘のおじいちゃんでありますが、初対面は1975年の初め、羽田空港でした。マエストロと兄が一緒にベルリンへ留学のために旅立ったのですがHNDに国際線あったの?と思った方も多いか?まだ成田空港が開港する前のお話です。
そのときにヴァイオリンのMちゃんと見送りで会っていたのです。もちろん、鮮明に覚えてるわけじゃなくなんとなく、のちに彼女がベルリンフィル屈指のコンサートマスターL.シュピーラー氏に師事するためにベルリンに来た時、最初の何回かレッスン通訳に同行しました。シュピーラさんの良さは、それはオケでのソロはシュヴァルべ氏とならび何度も聴いていて感服していましたが、まだ20代ではコンサートマスターの仕事の多くを理解していなかった僕は、ベルリンフィルのコンサートマスターでもありすごい人だという認識はありましたが、でもその程度でした。
Witt先生が定年を3年早く退団し、すでに引退していたヴィヴィオラ氏とハルトマン氏と正団員のコントラバス奏者全員を自宅にお招きになりました。最後の弟子としては料理上手の奥様がフルコース全てを準備なさると聞いて給仕役を申し出ました。数年前にひょんなことから(日本人シェフオーナーのイタリアンの給仕が、夏のヴァカンス前にマンマに早く会いたくなって2週間ちょっと早くイタリアに帰ってしまった)思いがけずイタリアレストランのバーを2週間担当することになり(ドリンク、バリスタ役も含む)使っていた足元までの白い前掛けを記念に戴いていて、それを着けて参加。「お、今日はToruがギャルソンかい」とからかわれながら、先生が40年を過ごしたベルリンフィルのバスセクションのお仲間との最後の会、その場に居ることが叶いました。
その詳しい話をしてると先に進まないので、、、。
どのオケもセクションの予定調整係がいます=トラ係。84年に初めて出演させていただき、カラヤンアカデミーは滞在許可をもらいましたが奨学金は貰えず、先生が試験的に「お前が一緒に弾く仲間に気にってもらえれば正式なエキストラとして出演できる」と機会をくださり、その時のプロコフィエフの5番は暗譜して望み、その後ベルリンフィルで弾く機会を得ました。2年契約の話もK.S.さんが推薦してくださり(先生は自分の生徒を推薦することはない、意地悪じゃなく、そういう方でした、それだけご自分の影響力をご存知だったんです)結局はもう一人の首席の生徒と僕の二人からになり、賛成票の差じゃなく僕には反対票があり叶わなかったとKさんが話してくれましたが、感謝してます。Kさんがまだ首席になる前の話、最初のトライアルで隣に座り、絶賛してくださったのはヴァッツェルさんとランケさんだったと先生が後に教えてくれました。
ゲスト出演も80年代で終わり、僕もベルリン室内オペラの首席として忙しくなり壁崩壊直後は初の東西ベルリン融合アンサンブルであったカンマーフィルハーモニーの創設から参加、そして先生が退団なさった頃はDSOの前身、RSO(ベルリン放送響)で弾かせてもらい始めた頃でした。
今の本題はL.シュピーラー氏です。
オケのエキストラというのは様々とは思いますが、利権みたいなところもあります。本当はそうするといつかはオケの縮小という自分の首を絞めることに繋がるかもしれないけれど、オケの団員同士がゲスト出演を交換するなんてのも、あります。もちろん招いて欲しいけれど、お願いに行くのも、なんか違う。難しいものです。僕は基本的に自分から売り込むことはしません。
いつも人事を尽くして天命を待つ、と思ってきました。
で、そのWitt先生の退団パーティーで当時調整係だったPが「まだベルリンにいたんだ、弾きに来ない?」と声をかけてくれました。後で判ったんですが、前述したようにWitt先生は身内の推薦はしない人。84年の最初の試験一回だけでした。PはFreddyは何も言わないし、もう他の町のオケに入って居ないんだと思ってたよ!と翌日に電話をくれて3-4年ぶりの出演がL.シュピーラ氏の退団記念コンサートともいうべきゲルゲイエフ指揮でプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲とショスタコーヴィチの8番でした。Witt先生は退団前だけどすでに休団なさっていて先生の五弦を使わせていただきました。
話がずいぶんそれましたが、そのベルリンフィルにしては異例のコンサート4回(一度は同じプロで青少年コンサート)ショスタコは大好きですし、もちろん燃えました。第3プルトだからKBの前列からオケ全部が見える。もともと楽譜は半分の時間くらい見ない演奏スタイルですから久々のベルリンフィル、もうアバドの時代になってましたが「お、久しぶりだな!」と目線や笑顔をくださるヴァイオリンや管の方々、今でもリハから本番の空気まで覚えています。
8本が5本編成でのプロコフィエフ、65歳のコンサートマスターがソリストとして協奏曲を演奏する、ってのは当たり前のことではありません。しかも自分のオケとはいえ、ベルリンフィルとです。
退団コンサートと上に書きましたが、退団記念に、そう記念として最後に弾く、って風にも思えるじゃないですか。
とんでもない。
リハから本番、その全てが感動の連続でした。
息子のCは学生オケで一緒で、Mちゃんのレッスンに同行したから面識もあり、またオケでもご一緒していたわけですが、ソリストとしての演奏を聴き、その偉大さに感動しました。これは僕だけじゃありません、オケのメンバーの表情にも常に見えました。
その素晴らしさの例として、2回目のコンサートだったか、第二楽章はチェロから上のピチカートで始まりヴァイオリンソロが加わります。12小節だったか休みでKBが加わります、かなり目立つ大事な箇所。
プロコフィエフの美しいメロディを歌い上げるシュピーラー氏、聴き惚れます。で、KBが加わるとこなのに首席のZ教授は楽器にもたれたまま、他のメンバーも動かない。一瞬考えましたが弾く場所は間違いない。D線のAから独り弾き始めたら隣が次の音で、前例がその後に入ってきました。感動のコンチェルトが終わり、休憩時間に「果たして良かったのか?」と考えました。休憩時間にはセクションには誰にも会わず、後半の8番も楽しく弾きながらも時々、是も非も何のリアクションもなかったがグループはトップに従うのが鉄則、一緒に落ちるべきだったんではないか?Z教授が落ちることなんて歴史上、かなり稀なはず。悩んだとまでは大げさですが頭の隅にありました。
シンフォニーが終わり先生の楽器を拭いてバックステージへ。KB部屋はバーカウンターの右端を抜けるのですが燕尾のままKさんとRさんが立って居て「こっちこっち!」と招いてくださる。ビールを渡され、乾杯。
「お前が今日、バスセクションを救った」と笑顔でおっしゃってくださいました。

汐澤先生との初対面から話が長くなってしまいましたが、MちゃんからL.シュピーラさんの素晴らしさ、Witt先生の音の出し方にも繋がる、今はあまり主流じゃない力強いけれど柔らかくsempliceな弦楽器の音を思っていたら書きたくなりました。
ディジタルコンサートホールの契約がある方は上記のコンサートもご覧になれるはずです、たしか1992年だと思います。

兄がベルリンに留学したのは上智のオーケストラでカラヤンコンクールに参加したのがキッカケでした。それがなければ僕がベルリンに来られていたかはわかりません。
6年前に吹奏楽と、弦楽アンサンブルのコンサートをフィルハーモニーで汐澤先生が指揮なさった時に声をかけて戴いて30数年ぶりの再会を果たしました。第九は二年前にもベルリン公演があったのですが僕は帰国していて参加できず。今回は初めて、汐澤マエストロの指揮でフルオーケストラでした。(自分でも今日の日記がここまで長くなるとは思いませんでした、、、)
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by Toruberlin | 2017-06-29 08:28 | 音楽の話 | Trackback | Comments(4)